MTE 8 小児医療と食生活−子どもの食を守るために−
幕内 秀夫(フーズ&ヘルス研究所)

 小児の肥満や糖尿病など、生活習慣病が問題になっています。原因は複雑だと思いますが、小児の場合は食生活のもつ意味が非常に大きいと思われます。子どもたちのおかれた食生活環境は、とてつもなく大きな変化をしています。昭和62年、家庭の食料費は「米」を「お菓子」が越えてしまいました。大変な時代になっています。「食育基本法」を制定せざるを得ない状況になってしまったということなのでしょう。しかし、現実に若い父母が食生活を見直そうと考えたとしても、それを指導する機関がほとんどないのが現状です。すでに行なわれていたとしても、「バランスのとれた食生活をしましょう」、「偏食をなくしましょう」、「野菜を食べさせましょう」などという指導が行なわれている例が多いように感じます。善意からでた言葉だとしても、子どもにとってこれほど迷惑な話はありません。子どもは、私たちのように何でも食べることはありえないのです。野菜が好きな子どもはほとんどいません。子どもにはたくさんの好き嫌いがありますが、それは本当に偏食なのでしょうか。私には、誤った常識が子どもに偏食という烙印を押しつけているように見えます。きちんとした理解のない提案は、若い父母に負担を強いるだけになります。

 本来、私たちおとなと違って、子どもの食生活指導は難しいものではありません。子どもは指導されなくても、アルコールやたばこを嗜むことはありません。

 平成生まれの親が登場する時代です。手の届かない「提案」は何もするなということと同じだと思います。今、子どもたちの食生活の何が問題なのでしょうか。そして、どのような提案が必要なのでしょうか。具体的なお話をさせていただきたいと考えています。