MTE 7 こどものための卒煙外来
加治 正行(静岡市保健福祉局保健衛生部)

 静岡県立こども病院では2002年10月、タバコをやめられない子どもたちを治療する専門外来、名付けて「卒煙外来」を開設した。昨今喫煙の低年齢化が進んでおり、ニコチン依存に陥る子どもが増えていることから、子どもへの禁煙治療は小児科領域での重要な課題と考えられる。年齢が低いほど、喫煙を始めてから短期間でニコチン依存状態となることが知られており、受診した中学生に尋ねると、吸い始めて数週間でやめられなくなったというケースが多い。

受診する子どもたちには非行などの反社会的行動を伴っていることはほとんどないが、全般的に自己肯定感に乏しく、問題解決能力が低く見える子どもが多い。家庭や学校で何らかの悩みを抱えていることも多いため、当人の気持ちを共感的に受け止めながら耳を傾ける姿勢が大切である。子どもたちのほとんどは、タバコの害について漠然とした知識しか持っておらず、喫煙による体調の悪化も感じていないことが多いため、禁煙への意欲は強くないことが多い。そのため、まずタバコの様々な害について写真やグラフ、映像などを使って、子どもの視覚に訴えながらわかりやすく説明することが大切である。

治療にはニコチンパッチを用いる。ニコチンパッチは、小児の禁煙治療においても安全で有効な薬剤であることが、海外での治験で確認されており、しかも小児では成人に比べて短期間の治療で、ニコチン依存から離脱できることが多い。子どもへの禁煙治療には特別なカウンセリングが必要なわけではなく、子どもたちにタバコの害や治療法を正確に伝えればよいのであって、通常の医療行為と変わりはない。タバコをやめられなくて苦しんでいる多くの子どもたちを救うために、全国の医療機関に子どものための禁煙治療の窓口ができることを願い、「卒煙外来」での診療について具体例を中心に御紹介したい。

【年次集会事務局からのヒトコト】

 子どもをタバコの害から守ることは日本外来小児科学会の活動のひとつです。今回はその活動の第一人者である加治さんにお願いしました。