MTE 6 元気な子どもは遊んで食べてしっかり眠る
神山 潤(東京北社会保険病院副院長、小児科)

 ヒトは寝て食べて、はじめて活動可能な動物です。活動内容は遊びであり、勉強であり、社会活動です。そして寝ること、食べること、活動することは密接に結びついています。しっかり食べ、しっかり活動すれば、しっかり眠れますが、眠らず、身体も動かさずでは、食欲もでません。この三つは個別に議論することはできません。実際この背景にある生物学的な機構も解明されつつあります。

 覚醒時に活動すると糖分が消費されますが、低血糖は適切なオレキシンの分泌を刺激し、覚醒と食欲がもたらされます。食べることでオレキシン分泌は減少し、覚醒が促されなくなり、活動に伴う適切な疲労とともに入眠を促します。覚醒時のリズミカルな筋肉運動はセロトニンの活性を高め、精神的な安定をもたらし、入眠に適切な体内環境を整えます。

 ところが睡眠不足ではレプチンが減り、グレリンが増えます。両刺激はオレキシン分泌をおそらくは過剰に促し食欲が異様に刺激されます。オレキシンは覚醒を促すので、食べない限り眠くなりません。実際睡眠不足で太ることが実証されています。

 しかしグレリンにはノンレム睡眠をもたらす作用もあります。また過剰なオレキシンにより食べるまで眠れないと書きましたが、前段では適切なオレキシン分泌が適切な食欲と覚醒をもたらすとしました。このあたりの調節機構については未解決な部分が多々あります。

 小児における生活習慣病の増加、あるいは成人のメタボリックシンドロームに関する報道が最近目立ちますが、その対策として主として食と運動が語られます。なぜこれらの予防に「眠ろう」と言う項目が入らないのか不思議でなりません。睡眠時間の少ない状態が続くと、朝のインスリンの分泌が悪くなり、血糖値が上昇し、コルチコステロイドの夕方の減少が阻害されます。ヒトは寝て食べて、はじめて活動が可能な動物であり、この三つは密接に関連していることをあらためて指摘しておきます。

【年次集会事務局からのヒトコト】

 もう一度聞きたいとの声があり、第14回日本外来小児科学会に引き続いて、今回もMTEで講演を依頼しました。演者より、「前回よりもバージョンアップしています、お楽しみに」とのコメントもあります。