MTE 11 乳幼児の視覚の発達(見逃したくない目の病気)
森實 秀子(こにし・もりざね眼科)

眼科においても乳児を扱う時には特に気を引き締める。それは、生まれる前から荷っている病気を仕分ける作業と、児が一生引き受けなければならなくなる病気との出会いがそこにあるから。多発奇形の一部疾患であったり周産期の感染症、未熟児網膜症、分娩外傷、先天白内障、先天緑内障、網膜剥離、角膜白斑、鼻涙道閉鎖(初生児涙嚢炎)、封入体結膜炎、流行性角結膜炎などなど。目の奥から前眼部まで多々ある疾患の中で、成人の眼疾患と同類の名称のもの(白内障、緑内障、角結膜炎など)もあるが、乳児では、成り立ちも、経過も異なることが多く治療開始の時期の選択も猶予が許されないことがある。また、子供に多い内斜視は、視力の発達を抑制し弱視になったり、両眼視機能(奥行き、深さの感覚)が発達できなかったりするので、外観だけの病気ではない。発達期の疾患であるから矯正可能な臨界期内に治療が必要になる。1歳半健診、3歳児健診は眼科サイドからみたら、実は健診の適期とはいえない。生後2ヶ月、つまり目を使い始めた頃に異常のサインが出やすいものである。特に眼振や斜視は見つけ次第、疑い段階でよいから、専門医へ移管してほしい。少子化した社会だからこそ、早期に新鮮な病像のまま専門的に観察されることで、初めて病態が明らかになり予防医学も発達し、治療もより効果的になるのではないかと日頃考えている。

【年次集会事務局からのヒトコト】

 「他科に聞きたいシリーズ眼科」では、日々の外来で見逃してはならない小児の眼疾患についての内容です。以前に横浜で開催された小児科医の勉強会での講演が好評でしたので、今年次集会でもMTEをお願いしました。