MTE 1 聞いて得するわかりやすい小児泌尿器科学 
寺島 和光(前神奈川県立こども医療センター泌尿器科部長)

 泌尿器疾患の中で、小児科医にとっても重要な包茎、停留精巣、精巣水瘤、精索捻転について解説する。

 包茎:ほとんどの包茎(真性包茎)は成長と共に自然治癒するので、治療が必要なものは少ない。また治療内容も保存療法が主であり、手術適応例はごくわずかである。包皮口が非常に狭い、排尿異常がある、亀頭包皮炎を繰り返す、膀胱尿管逆流がある、などの問題のある包茎に対してはステロイド軟膏による保存療法を行う。本療法は安全で簡単であり、有効率は70%以上である。

 停留精巣(停留睾丸):入念な触診によって遊走精巣(移動精巣)や精巣欠損と区別する。精巣の自然下降は生後3ヶ月以降はあまり期待できないので、治療(精巣固定術)は6ヵ月〜2歳(理想は1歳前後)に行う。ホルモン療法の有効性は低い。治療しても将来の不妊症や精巣腫瘍発生などの合併症はほとんど予防できないが、やはり治療は必要である。

 精巣水瘤(陰嚢水腫):陰嚢内まで及んだ鼠径ヘルニアとの鑑別が重要である。水瘤では大きくてもその上縁が確認できてくびれがある。手で圧して腫瘤がグジュグジュと還納されればヘルニアである。精巣水瘤は70%以上が自然治癒するので(年少児ほどより高率)、原則としてすべて経過観察とする。3〜4歳を過ぎても鶏卵大以上で縮小傾向がない水瘤は根治手術の適応である。水瘤の穿刺排液法は行うべきでない。

 精索捻転(精巣捻転):新生児・乳児期と思春期後の10歳代に発生しやすい。急激な陰嚢部の疼痛や発赤などの典型的な症状・所見は年少児では乏しい。精巣は硬く腫大するが、精巣上体炎や精巣付属器捻転との鑑別は難しい。ともかく精巣が硬く大きい時は、診断いかんにかかわらず緊急治療が必要と考えるべきである。

【年次集会事務局からのヒトコト】

 「他科に聞きたいシリーズ泌尿器科」では、前神奈川県立こども医療センター泌尿器科部長、寺島和光さんに講師をお願いしました。長年、神奈川県の小児泌尿器科をリードし、その経験から小児科医が知っておきたい泌尿器科診察のコツの講演です。