教育セミナー 2 抗インフルエンザ薬の使い方のコツ 
 雅亮(横浜市立大学医学部小児科)

2003−2004年のシーズン途中に、抗インフルエンザ薬オセルタミビル(タミフルR)が、ラットへの大量投与により中枢神経障害を発生させたことを根拠に、1歳未満の乳児へ投与されないよう通達が臨床の場に出回ったことは記憶に新しい。その際、一部ではオセルタミビルが乳児には禁忌になったと誤解し、代替としてアマンタジン(シンメトリルR)を乳児に使用していた現実があった。オセルタミビルは1歳未満の乳児には適用がないが、本邦では0〜2歳の乳幼児はインフルエンザ脳症発症のリスク年齢であることから、オセルタミビル投与が是非とも必要な場合は、乳児には安全性、有効性が確立していないこと、新たにラットで副作用が生じたことを家族に説明をした上で、処方することが重要である。

本学会と小児感染症学会が主体となって、1,674例の乳児のインフルエンザに関する診療行動の前方視的検討が行われ、オセルタミビル投与による重篤な副作用は認められていないものの投与後の数週間にわたる十分な注意を喚起している。我々も乳児に対する、オセルタミビルを始めとする抗ウイルス薬の効果・安全性について、横浜市小児科医会のご協力のもと、横浜市内の乳児のインフルエンザについて、1999−2000年シーズンから5年間後方視的調査を行ない、さらに2004−2005年シーズンからは3年にわたる前方視的調査を実施している。5年間の後方視的調査でのべ221例、2004−2005年シーズンの1年目前方視的調査で342例が乳児インフルエンザと診断されたが、いずれの調査でも抗ウイルス薬投与による重篤な副作用は認められなかった。

今回は、これらの解析結果を供覧し、特に乳児の抗インフルエンザ薬の使用について、文献的考察を交えて考えてみたい。               

【年次集会事務局からのヒトコト】

 横浜でのインフルエンザ治療のデータを提示し、特に乳児に対するインフルエンザ治療の実際や治療方法など、実践的な話を中心に構成します。