教育セミナー 1 経口補水療法の実際 
金子 一成(関西医科大学小児科)

コメディカルの方にもおすすめです

発展途上国において急性胃腸炎は小児死亡と入院の主たる原因であり、5歳未満の小児に限っても世界で年間15億例の発生がある。

しかし経口補水療法 (ORT) の世界規模でのキャンペーンが行なわれた結果、過去20年で下痢性疾患の死亡数は大きく減少した(1982年:500万例、1992年:300万例)。そしてORTは今や急性胃腸炎の治療に有効な低費用の標準的治療法として広く認識されつつある。

しかし、発展途上国に比べて米国やわが国のような先進国では、まだORTの認識が低く、経静脈輸液療法を好んで使用する環境にある。事実、米国小児科医の約30%が「嘔吐または中等度の脱水症を来した小児に対してORTを用いない」というアンケート結果も報告されており、急性胃腸炎の治療としてのORTの利点はまだ十分に理解されていない。

 そこで本講演では明日からの臨床に役立てて頂ける情報を提供することを目的として”小児における急性胃腸炎およびそれに伴う脱水症におけるORTの意義およびその具体的方法”について2003年に米国厚生省疾病管理予防センターから発表された推奨案を紹介する。

またORTに用いる経口補水液の組成に関して私どもの教室で行ったラット腸管を用いた潅流実験の結果を提示し、文献的考察を加えたい。

【年次集会事務局からのヒトコト】

 胃腸炎や脱水の子どもの管理に、最近は経口補水療法が取り入れられています。点滴治療に比べ、子どもや保護者への負担は少ないこの治療について、実際に指導するコメディカルの方々にも参加して頂きたい内容です。